
RASという言葉を聞いたことはありますでしょうか?
ちょっと聞き慣れない言葉ですが、
アスリートや指導者の皆様には是非知っておいてもらいたい言葉なので、今回はこのRASについて解説をして行きたいと思います。
まず、RASの正式名称をお伝えしておきます。
RASとは、「Reticular Activating System」の略であり、日本語では「網様体賦活系」と言います。
これは、簡単に言うと脳の〝フィルター機能〟の事なんですね。
ちなみに、フィルターというくらいですから何かと何かを選り分けているんですが、RASが寄り分けているものは何かというと〝情報〟なんです。
五感によって物理世界から収集した情報を認識に上げるか上げないか判断して選り分けているんです。
RASによって意識に上げる方に選ばれた情報は直ぐ様にその人に認識される事になります。
一方、選ばれなかった方の情報というのは網膜に映ったり、鼓膜に届いているにもにもかかわらず、その人の認識に上がることはありません。
この様に認識から外れてしまった情報のことを「スコトマ(盲点という意味です)」というのですが、RASというのはつまるところ、
〝認識に上げるべき情報とスコトマにすべき情報を選り分けるフィルター〟
なわけです。
そして、このRASが情報を選り分ける際に明確な基準というものがあります。
それは、
①その人が知っていることかどうか
②その人にとって重要かどうか
という基準です。
まず①ですが、これは〝知らないことは認識出来ない〟という事です。
例えば、最近長距離選手が取り入れ出している厚底シューズですが、このシューズが選手のスピードアップを可能にしている理由は靴底内のカーボンの働きによるものです。
カーボンが反発力を生み出し、より加速度的に選手の走力を上げているわけですね。
でもこの様な事実を知らないと、なぜライバル選手が急に速く走れる様になったのかがわからない(認識出来ない)のです。
仮に、ソールが高い靴が怪しいぞと気付いて自分も厚底履を買おうと思っても、カーボンの入っていない靴を買ってしまうかもしれません。
この様に、知らない事は認識に上がりようが無いのです。
そして②つ目ですが、これは世間一般的に重要とされているものではなく「その人にとって重要なもの」が認識に上がる基準になるという事です。
こちらも例をあげて言うと、楽しい試合が出来れば良いというA選手と、全国制覇をしたいというB選手が同じコートに立ってフル出場したとします。
A選手にとって重要な事は楽しむ事ですから、試合における楽しい場面が思い出として強く残ることでしょう。
一方B選手の方は楽しいことよりも、全国制覇をする上での課題となるプレーや、相手チームの参考になるプレーなどの方が印象に残ります。
この様に、同じコート内で一緒に同じ相手と戦っているにもかかわらず、全く違ったものを認識しながらプレーをしているのです。
どうですか?
RASについて理解が深まりましたでしょうか?
ちなみに、RASは設定を変えることも可能なんです。
RASの設定を変える時は目標を変えれば良いんですよ。
目標とはその人にとって最も重要なことなので、目標を変えていけばその都度認識する情報も変わってきます。
ですから、どうやったら重要な情報を認識できるだろうかと悩むより、まずは自分の目標をより高いものに変えてみて下さい。
きっと面白いほどに世界が一変する事でしょう。
ということで今回はRASについて解説をさせて頂きました。
是非皆さんもこの様な機能が自分の脳の中にあるという事を頭の片隅に置いた上で情報を収集する様にしてみて下さい!